2013年7月25日木曜日

●“ファミキャリ!会社探訪”第3回はバイキング!


 ファミ通ドットコムにオープンした、ゲーム業界専門の求人情報サービス“ファミキャリ!”。ゲーム業界での転職を目指す人たちに向けた“ファミキャリ!”が、ゲームメーカーを訪問し、実際にお話をうかがうこのコーナー。第3回となる今回はバイキング!
 2012年よりアーケードで稼働中の多人数対戦ガンアクション『ガンスリンガーストラトス』(発売元:スクウェア・エニックス)の開発を担当したバイキング。今回は、代表取締役社長として、またプランナーとしても会社を引っ張る尾畑心一朗氏と、開発の第一線で活躍する4人のスタッフにお話をうかがった。

●理念はただひとつ、“作るゲームをとことんおもしろく”

01おばた
尾畑 心一朗/バイキング 代表取締役社長
--最初に、会社設立の経緯から教えてください。
尾畑 私は以前、大阪のカプコンで企画・ディレクションをやっていました。そこでは成功した事例、なかなかうまくいかなかった事例といろいろな経験をしました。10数年、ゲーム業界で仕事をしてきましたが、自分の理想として、とことんゲーム作りに前向きな人間や環境、経営陣から現場のいちゲームクリエイターに至るまで、同じ方向を向いた組織、いわゆる“ぜい肉のない、筋肉だけの組織”を本当に作ってみたらどうなるのだろう、と思ってこの会社を設立しました。また、最近「ゲーム業界が下火傾向だ」という雰囲気がありますが、「いや、それっておもしろいゲームが出ていないだけじゃないのか」と。中学生や高校生に、7000~8000円もするゲームソフトを買わせて、「CMだけで、ゲームの中身はおもしろくない」というソフトが続けば、僕が高校生だったとしても、そんなに何度も高いソフトを買っていられない。要は、単におもしろいソフトが少ないだけなんじゃないのかな、と思っていました。
 いいゲーム作りはチーム作りから。いいチームができればいいゲームもできる、という経験がありました。そのチーム作りというのは、まずは会社作りではないかということで、信頼できるリーダーやメンバーを集めて、きちんとゲーム作りをしたら、自分たちがおもしろいと思い、ユーザーさんにもそう感じてもらえるゲームができて、結果的に“おもしろいゲームだから売れる”、“売れるからユーザーが増える”ことになるのではないかと思いました。自分が現役のクリエイターであるあいだに、それをまっとうしてみたかったというのが、会社設立の理由です。
--会社設立から丸5年が過ぎたわけですが、当初思い描いていた通りですか?
尾畑 いえ、想像していなかった5年後ですね。僕はプランナー出身なので、当初は企画中心で、プランナーだけの専門の会社にしようと思っていました。5、6人のプランナーとディレクターのみの精鋭部隊にして、プログラマーやデザイナーは、ほかの会社と協力して行う方向で。でも、やはりゲームの根幹部分を作るのは「同じ釜の飯を食った」者同士じゃないとダメだなと痛切に感じて、背中を預けられるようないい人材を、どんなことをしてでも集めようと思いました。各職種のリーダーは、きちんと社内のメンバーで揃えようと思いました。
 それから、最近はいろいろと夢が出てきました。おもしろいゲーム=売れるゲームであるわけで、おもしろくて売れるゲームが“いいゲーム”なわけです。売れるゲームが作れるんだったら、自分たちで売りたいよね、小さくても強いゲームメーカーになりたいよね、と思うようになりました。会社設立当時より欲が出てきたというか、2、3年後に大きなビジネスをやりたいという、具体的な夢も出てきました。ですから、仕事が楽しいですよ(笑)。
 新しい技術を手に入れたからとか、こんなことができるようになったからというのではなく、同じ価値観や本音を言い合える人間、いっしょに夢を見ることができる仲間が増えてきたというのが心強いですね。

●社名に込められたゲーム作りへのこだわり

--社名の由来について教えてください。
尾畑 “バイキング”という社名には、3つの意味が込められています。「“海賊(バイキング)”のように、開拓者精神を持って、ゲーム作りやビジネスチャンスに挑んでいく」、「“バイキング料理”のように、好きな物を好きなだけ食べ、やりたいことがあればやるという欲張りの精神」、「“王(By King)”のようにプライドと責任をもって仕事にあたろう」という3つです。
--設立から5年。御社の強み、魅力はどんなところですか?
尾畑 経験則でいえば、これまでは確かにアクションゲームの開発経験が豊富ですし、特殊といわれるアーケードゲーム業界での実績や経験もあります。でもいちばんの強みは、職種に関係なく、「ゲームをおもしろくするためだったら、何を言ってもいい」という部分ですね。そういった、自由でフレキシブルなスタンスが会社として実践できているのが強みです。
 たとえば、ひとつの企画書に対し、いろいろな職種のスタッフから意見が出てきます。最後に決断するディレクターはもちろんいますが、いいものになるのであればすぐ試せばいいわけで、すぐに重大なことを決めることができます。ですから特別な会議も必要ないし、仕様書を時間かけて細かく仕上げる必要もない。ゲームが好きで、詳しい人間が集まっていて、口で説明してすぐ決められるのならそれで十分。実践的で、本質的な仕事ができていると思っています。
--社内の雰囲気はどんな感じなのですか?
尾畑 開発チームはいくつかに分かれていますが、職種の壁はなくして、風通しのいい会社にしたいとつねに思っています。ゲームを大切にするなら、スタッフを大切にするのも当たり前だと思うんです。
--社員は現在何名ですか?
尾畑 僕を入れてちょうど40人です。もう1チームぶん人数を増やして、いまの1.5倍にしたいですね。そのくらいの人数なら、僕からもスタッフからもちょうど目が届く距離感です。ただ人数を増やすだけではなく、風通しのいい環境を作りながら、スタッフを増やしていければと思います。そういう意味で、会社はワンフロアということにもこだわっています。
--今年は新卒を8名採用されたと聞いて驚きました。
尾畑 いっしょにやりたいと思う人材なら、遠慮せずに採用しようということです。結果的にそうなっただけで、数年後には成長して頼もしい仲間になってくれていると思います。
--いままではアーケードゲームの開発がメインだったと思うのですが、今後はどうなる予定ですか?
尾畑 まだ発表できないものですが、コンシューマのタイトルもやっていますし、プラットフォームはとくに限定していません。ソーシャルゲームについても、売れそうだから、成功しそうだからと作るというのではおもしろくないし、懐疑的です。作るのはかまわないけれど、きちんとコンセプトを持って、成功までの道順を考えて取り組む必要があると思っています。
 よく発売元などからは、「何か考えて」と言われることが多いです(笑)。先方の希望に対して、○○したらおもしろくなるとか、△△すれば利益が上がるという提案をするケースですね。
--むしろ御社が得意な方法ですよね。
尾畑 はい。得意ですし、そのほうがおもしろいですよね。だから、後は自分たちがパブリッシャーとして売れるようになればいいんじゃないか、とも思うわけです。

●未来のパブリッシャーを目指して

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--現在進行中のプロジェクトは、どんなものですか?
尾畑 去年、『ガンスリンガーストラトス』(発売元:スクウェア・エニックス)という、かなり大きな規模のアーケード用ゲームを作りました。それに匹敵する規模のタイトルが複数進行しています。それもあって、今回いい人を紹介していただけないかな、と(笑)。
--バイキングが見据える、今後のビジョンについて教えてください。
尾畑 社内に大きいチームを3つほど作りたいですし、またパブリシティの仕事もこなせるように、徐々に組織を大きくしていきたい。これから仕込む数々のプロジェクトは、何らかの形となって実際に世間に披露できるのは、2~3年後だと思います。とすると、今年参加していただければ、ちょうど2~3年後には、各プロジェクトの根幹に関わっていただけるいいタイミングだと思っています。ゲームクリエイター以外でも、近い将来、ネットワークやサーバー、ハード関連をはじめ、もしかしたら営業や広告といったスタッフも必要になってくるのではないかと思っています。
--最後に、転職を考えているゲーム業界の方にアドバイスを。
尾畑 極端な言いかたになりますが、「いま作っているゲームが発売されても、後悔しないでほしい」。後悔しない仕事をしてほしいし、後悔しないゲームを作ってほしい。そのうえで、いまの職場に10年後もいたいのかどうか。そう思える環境で働いてほしいし、惰性でやってほしくない。しょうもないゲームを作るくらいだったら、もう止めてほしい(笑)。「そんなわけない。自分たちはおもしろいゲームを作っているに決まっている」という思いで作ってほしいですね。
 自分が関わるからには、「この世にこのゲームが生まれたのは、俺のおかげだ」と思える人。そのゲームのおかげで、大勢の人がおもしろいとか、楽しいと感じ、ひいてはゲーム業界に貢献したいという人に来てほしいです。技術や経歴も大事ですが、そうした気持ちさえあればなんとかなる。せっかくこの業界で仕事をするなら、いっしょに楽しみましょう。

●スタッフが実感する“バイキングらしさ”

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(右)橘川 優樹/プログラマー
現在は未発表タイトルのプログラムを担当。
(左)新井 俊晴/メインプログラマー
橘川氏と同じ、未発表タイトルのメインプログラムを担当。
(右)森里 崇男/UIデザイナー
橘川・新井とは別プロジェクトで、UI(ユーザーインターフェース)などを担当。
(左)成相 真治/敏腕アーティスト
森里氏と同じプロジェクトで、背景制作をメインに担当。
--皆さんがバイキングに入ったきっかけを教えてください。
橘川 私の場合は特殊だと思いますが、バイキングに入る前は、証券系のシステムエンジニアをしていました。バイキングには2010年7月に入社したのですが、きっかけは代表の尾畑とたまたまネットで知り合い、お酒を飲みに行くことになったんです。それまでも個人的にゲームを作っていたのですが、会社にお邪魔した時にもいろいろと話をさせていただいて、その時にゲーム作りに対する考えかたに共感できたので、入社しようと思いました。
新井 私はゲーム系の専門学校を卒業してから、ゲーム業界で働いていました。バイキングに来る前は、ソーシャルアプリ系の制作会社に在籍していたのですが、当時は、同じようなカードバトルばかりに偏っていて、がんばって自分で考えた企画よりも、見たことのあるようなクローンアプリのほうがウケがよく、仕事自体に魅力を感じなくなっていました。またバイキングには、専門学校のころの知人がすでに働いていて、じつは何度か声をかけてもらっていました。尾畑とも話をしたのですが、「おもしろいゲームをつくる」ということに特化した会社なので、ここでなら楽しい仕事ができそうだなと思い、転職を決意しました。それが2012年の1月くらいです。
森里 僕は専門学校を卒業して、派遣でゲーム系の開発現場を転々としていました。派遣でバイキングを紹介されて仕事をしていたのですが、その後、尾畑と食事をする機会があり、その場で「おもしろい会社だし、このまま仕事を続けさせてもらいたい」と伝えました。それが2011年の終わりくらいですね。
成相 自分は入社して半年くらいです。それまでの10年ほどは、大小さまざまな規模のゲーム会社で働いていましたが、そこでお世話になった方がバイキングに転職していて、尾畑と飲む機会を作ってもらいました。規模の大きい会社は確かに安定していますが、守りに入るというか、伝統を守る姿勢にちょっとうんざりしていて、逆にバイキングは、小さいながらも活きのいい会社だなという魅力を感じました。元気のいい会社で働いてみたいと思い、お世話になることにしました。
--橘川さんは特殊な経歴ですね。
橘川 そうですね。でもすぐに実戦に投入されました(笑)。『ガンスリンガーストラトス』の開発直前に入社したので、準備段階から関わることができました。ですので、実際に使うゲームエンジンやミドルウェアの選定・検証作業から入りました。

--会社の雰囲気はいかがですか?
橘川 ゲームに対する愛情がすごく強いですね。“作る”ことだけではなくて、“遊ぶ”ことに対してもプロフェッショナルです。社内には派遣の方もいるのですが、「バイキングのスタッフは、ゲームが大好きだよね」とよく言われます。たとえば、忘年会や新人の歓迎会があった時でも、2次会は会社に戻ってみんなで遊びたいという(笑)。その愛情は「おもしろいゲームを作りたい」という意識に繋がっていると思います。
新井 仕事は仕事としてきっちりこなすんですが、仕事でありながら、楽しく仕事をしていきたいと考えています。そういう考えのもと、会社には一体感がありますね。
森里 『ガンスリンガーストラトス』の開発中に感じたのは、トラブルが起こってもギスギスせずに、なんだか楽しそうに原因究明しているんですよ。まるで、そのトラブル自体が“イベントが発生したぞ”的な(笑)。
成相 職種や役職によるパーテーションを感じないです。プランナーはプランナー、プログラマーはプログラマーというふうに分業化されていなくて、開発途中でも問題があると思えば自分の主張ができる雰囲気があります。とくにアクションゲームの場合、手ざわり感は人それぞれですから、自分で主張したからには、みずから実行するといったバイタリティーも感じますね。
新井 みんなが主導権を持っている感じですよね。
成相 主導権を主張したい人が集まってくるというか、採用面接が終わった後に、「いまの人、バイキングっぽいよね?」という話になったり(笑)。ちょっと話が脱線しますが、あるプログラマーが設置した駄菓子の棚が社内にあるんです。○円とか書いてあって。「新しい駄菓子を入荷したよ」ということからでも、新しい交流が始まりますね。
--入社してよかった点は?
橘川 バイキングのプログラマーの仕事の進めかたが、とてもいいと思っています。ほかの会社では、企画書や仕様書の通りに作ると思いますが、バイキングの場合、プログラマーのほうで「こうしたらおもしろい」と思えば、自由にやらせてもらえる雰囲気があるんですね。自分で考えてモノを作らせてもらえるのは、すばらしいことだと思います。
成相 いいと思ったらそれを実行し、「これ、どう?」と周囲に聞くことができる環境です。「時間がもったいない」とか、「言った通りに作って」といった雰囲気がないのが、とてもいいです。
森里 自分はUI担当なので、手ざわりや見た目の分かりやすさについて、周囲に意見を求めることが多いのですが、会社全体について言うと、とくに何も言わなくても周りから意見が出てきます。それらはストレートな、忌憚のない意見なので、参考にもしやすいです。
新井 いま進めている未発表のプロジェクトで、仕様に関わる根幹の部分について、担当以外のプログラマーやディレクター、4月に入社した新人などを含めて、毎日ミーティングをしていました。当然古参のスタッフは、好き勝手に意見を言ってくれますが、新人はなかなか最初からそうはいきません。でも2週間も経つと、そうした会議でもどんどん意見を言ってくれるようになって、「こうやって社風が伝わっていくのだなぁ」と感じました(笑)。

●ともに“おもしろいもの”を共有できる人材を

--バイキングを志望する方へひと言お願いします。
橘川 プログラマーとして言わせてもらうと、当然プログラム言語のスキルは必要ですが、いちばん重要なことは「おもしろいゲームを作る」という意識です。プログラム言語は、あくまでゲームを作る手段でしかないですから。
成相 デザイナーとしては、デザイナーだからと言って絵だけを追求する芸術家タイプは向いていないですね。意外と注文される項目が多いのでタイヘンだと思います。「おもしろいゲームを作る」という考えと、デザイン以外にも興味がある人には、とてもやりがいのある会社だと思います。
森里 周囲が好き勝手に言ってくるので、メンタルは強いほうがいいですね(笑)。ひと言でバッサリと切り捨てられることもよくあるので、他人から何か言われて凹むタイプは向かないですし、自分から物申すくらいのほうが向いていると思います。
新井 自分の意志を強く持っている人が向いていると思います。自分の中でくすぶっているものを外に出したいという人とか、自分の中の“おもしろい”を形にしたいという熱い思いを持った方が来てくれるといいなと思います。「おもしろいゲームを作る」というのがバイキングの原点であり、すべてです。現状に満足したくないし、会社自体も「おもしろいもの」に飢えている集団であってほしいと思います。

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●バイキングってどんな会社?

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▲一躍バイキングの名を有名にした『ガンスリンガーストラトス』。アップデートも定期的に行われている。
 2012年よりアーケードで稼働中の『ガンスリンガーストラトス』の開発を担当したのがバイキングだ。そのほかにも数々の家庭用、アーケードのゲームタイトルの開発に携わっている。今年で会社設立から丸5年を迎え、現在は未発表のプロジェクトなどが、水面下で順調に進行しているとのこと。
 尾畑社長の、「作るゲームをとことんおもしろいものにする」という信念に共感した、総勢40名のスタッフが、日夜ゲーム作りにまい進。明るい雰囲気の中にも、妥協を許さないゲーム制作に対する姿勢を垣間見ることができる。
<会社概要>
株式会社バイキング ●代表取締役社長:尾畑心一朗 ●設立年月日:2008年6月4日 ●従業員数:40名(2013年7月1日現在) ●事業内容:プランニング、ディレクションに特化したゲーム開発

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▲スタッフ間のコミュニケーションを図ることができる忘年会などの社内イベントも、積極的に行っている。
▲社内には『ガンスリンガーストラトス』の筺体があり、スタッフがプレイしながら、改善点や調整点を探る。
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▲スタッフが何名か集まれば、自然と“ゲーム大会”が始まることも。この中から、さまざまなアイデアが!?

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